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2004.12.04
地方空港の問題と支店経済と中部国際空港
ガ島通信さんが「関西には空港が多すぎる」と言われ、あざらしサラダさんがこれに応える形で、地方空港は「羽田日帰り」を求める都会の側の都合もあるのでは、と言われました。
ただ、少々違和感があるのは、都会側のエゴにしても、それは「日帰りできないところとはビジネスしない」というエゴで、地方側がやむを得ず作る、という面があるように思えます。東京本社、地方支店という経済モデルでは、支店が置けないところは発展しない、という部分がありました。これは東京中央集権主義の政府の発展とほぼ重なると思います(日銀支店の分布と同様か?)。私の故郷の広島も支店経済の街と言われています。
そこで今注目しているのが、トヨタ空港とすら感じられる、新しく出来た中部国際空港です。
東京から見た場合、名古屋を中心とする中京圏は実に微妙な距離にあります。新幹線で2時間、高速でも4~5時間という距離は東京からは飛行機はほとんど必要としません。また、新幹線のダイヤを見ても名古屋始発は数が少ないです(出張だと自由席が取りにくいのが名古屋ですね)。
ただ、逆に名古屋中心主義を採ると話は変わってきます。東京、大阪という日本の二大都市圏までどちらも陸送で日帰り可能という距離感があり、日本海側も米原、京都、敦賀とすぐ近くです。高速道路、鉄道、港湾も十分整備されています。
もともと三河モンロー主義という言葉があるくらい自主独立路線の強い地域、最近のトヨタを中心とした経済の強みを前面に出し、空港整備も国家事業でありながら民間企業の手法を利用しターミナルの建設コストを当初予定よりも
1千億円も下げられた、という記事もあります。
空港の運用は、現行の名古屋空港もコミュータ中心の小型機用空港として残るようですので地元としては大変でしょう。広島でも旧来の広島空港が移転して広島西飛行場となりやはりコミュータ機の運用を行っていますが便数が伸びず苦労しているようです。
地方空港を作る場合、羽田線以外をいかに充実させるかが実は鍵なのかもしれません。そして、そのためには東京の付属品としての地方ではなく、東京をパスして直接外部(国内でも外国でも)との取引をするだけの必要性があるか、(作れるか)が肝になってくると思います。
航空路で海外を見た場合東京は実は最悪です。近いのはハワイくらいで、北米線、ヨーロッパ線のどちらをみても新千歳には負け、アジア方面では韓国、中国、東南アジアのどれを取っても関西方面の空港に対しプラス1時間は要求されます。ロシア、シベリア方面では当然日本海側に利があります。
将来、例えば上海がアジア経済の中心となり、上海からの日帰り圏はどうか、となった場合成田の遠さが致命的になるようにも感じます。
空港というのは交通機関ですので「どこと結ぶために作るか」がもっとも重要な決定要因となるはずです。とにかく羽田に結ぶためならばそれも良いでしょう。そして、投資効果が十分に回収できるめどと作戦があるならば別に問題はありません。ただ、空港があればよい、空港を作ること自体が目的化してしまうと回収がされず、不良債権となってしまうと思います。
中部国際の自主独立路線が本当に貫かれていけるかはこれからが重要でしょう。今のところは計画はかなりシビアに見積もられているように思えますが、結果はこれからです。注目していきたいと思います。
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2004 12 04 [経済・政治・国際] | 固定リンク
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» 2nd econophysics seminar from nadja in wbo
5/19(14:00~)東工大経済物理学セミナーin大岡山キャンパス 百年記念館2F
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受信: May 8, 2005, 5:46:37 PM
コメント
トラックバックありがとうございます。
>地方空港を作る場合、羽田線以外をいかに充実させるかが実は鍵なのかもしれません。そして、そのためには東京の付属品としての地方ではなく、東京をパスして直接外部(国内でも外国でも)との取引をするだけの必要性があるか、(作れるか)が肝になってくると思います。
おっしゃるとおりなのですが、すでに都会が地方からお金を吸い上げる仕組みができあがっていると思うのです。
したがって、今更地方だけで解決しろと言うのは少々酷なような気がします。また、仮にできたとしても、すぐに都会が吸い上げる仕組みに取り込まれるのではないかと思うのです。
「勝ち組・負け組」の社会とはそういうものではないでしょうか。
その意味で、名古屋が地方かどうかは別として、確かに中部は異色の存在だと思います。中部圏だけで完結できるからこそ、デフレ不況下でも「名古屋だけが元気」と言われるのでしょう。
投稿者: あざらしサラダ (Dec 5, 2004, 9:14:11 PM)
お邪魔します。
そもそも日本人が「空港」「航空機による(旅客及び貨物)
輸送」をそれ程「重要視」していないからではないでしょう
か。だから「本気で」「真面目に」考えないのでは。
将来空の世界で日本が取り残されたとしても(もはやそうな
りつつある?)「大した問題ではない」の一言で片付けられた
りして。
投稿者: ブロガー(志望) (May 7, 2006, 1:29:46 PM)
ブロガー(志望)さん、コメントありがとうございます。おっしゃるとおり、日本人の「常識」には空港は特別なもの、という意識が強いようです。ただ、貨物で言えば日本での貿易額トップは成田空港なんですよね。輸入、輸出ともに圧倒的に。2004年の輸出額の17%、輸入額の21%を占めているのですよね。関空も全国6位ですし。これを踏まえていれば、現代の貿易において空港の重要性が理解できると思います。
(私は千葉在住なので成田周辺もよく通るのですが、大型の貨物基地が多数空港周辺に出来ています)。
セントレアも、名古屋圏の貨物需要+トヨタ等の出張需要ということで、旅客はおまけなのかもしれません。
米Amazonから書籍を買う場合、以前は安い船便、早いが高い航空便、という選択がありましたが、今は航空便が当たり前になっています。海外旅行、という発想で見ると飛行機は特別なのですが、貨物では航空はよっぽどの大物で無い限り船便では遅すぎて使えない状況になっているのですよね。ですので、羽田の4本目の滑走路を作る、という事にもなっています。
ですので、問題は日本全国に仕事をばら撒くのではなく、どこの需要地に向けてどのような物流基地を作るか、というロジスティクスであるといえるでしょう。国家戦略として取捨選択ができるか、ということでもあります。
よって、この間開港した神戸空港が都市間競争に負けないための攻撃的投資、というのは理解できます。ただ、競争ですので勝ち目があるかどうか、ということを踏まえているかを有権者としては見ていく必要があると思っています。
投稿者: skywolf (May 7, 2006, 10:36:15 PM)